オーダー作成 作品紹介 ぬいぐるみ病院 お問い合せ ふくろうの森
「Wiiの間」の職人Wiiテレビ 修理、魅せます#003で紹介されています。

<お知らせ 2017年6月> やさと ふくろうの森 はじまりました
(2018年3月) 2018年4月より、ぬいぐるみ動物園を開園します。
(2018年5月) 常陽リビング様よりご取材いただいた「ようこそ“森の動物園”へ」はこちらからご覧いただけます。
(2019年1月) 2019年3月より、ニャンニャンワンワン展を開催します。

ぬいぐるみ病院 (ぬいぐるみ修理)

 大切にしていたぬいぐるみの鼻や目などがとれてしまって捨てられずに手元にありませんか? 思いがこもったぬいぐるみは人生の大切な宝物です。樹麻紅工房ではそういったぬいぐるみを修理します。

 まずはじめに、樹麻紅工房でその修理したいぬいぐるみの状態を診療いたします。その後、どのように回復させるかの相談をさせていただきます。状態によっては、修理不可能な場合もあります。また植毛等の治療は多少色が変わり、完全には元通りの色にはなりません。ご了承ください。

 たとえば、修理内容が多く同じデザインで同一の新しいものがほしい場合も可能です。詳しくはメニューのオーダー作成をクリックしてご参考ください。

 以下、お客様からお預かりしたぬいぐるみの治療(修理)の様子です。画像をクリックすると、治療の内容が詳しく載っております。ご覧ください。

中身がぼろぼろ 中の綿がみえている 焦がし タバコの焼け跡 皮膚の破れ
ブーツの取替え 洋服の破れ 仲間を増やしたい 鼻がとけてしまった 皮膚の破れ
 
中綿がでてきてしまう。 中綿が出てきてしまう。髪を着けたい。 皮膚の剥がれ  

修理したいぬいぐるみの診察方法

 事前にEメールかお電話で診察することが出来ます。Eメールの場合、お問い合わせから2-3日以内にはお返事を致しますが、場合により送信できない時があります。その際には、出来ましたら再度お問い合わせいただければ、こちらからご連絡いたします。ぬいぐるみは後日、樹麻紅工房にお送りいただくようになります。

 Eメールの画像の添付などによって診察できることもありますので是非ご連絡ください。

 面接による診察は事前予約受付にて以下の日程で行っております。
 <面接による診療日: 3月、4月、5月、6月、9月、10月、11月、12月の第2土曜日、第2日曜日>


樹麻紅工房

郵便番号 315-0101

茨城県石岡市大増360-3

電話番号 0299-44-3071 (受付時間 9:00~17:00)

Eメール kimagurekobo2002@hotmail.com

お問い合わせの際には、氏名、ご希望(修理、オーダーなど)、ぬいぐるみのサイズをお知らせください


修理代金とお支払い方法

 修理の内容によって異なりますが、事前の打ち合わせにて代金と日数のお見積もりをさせていただきます。

 代金のお支払い方法ですが、佐川急便の代引き支払(現金)でお願いします。

 

 


 

抱き人形  茨城県つくば市M.Nさんからのお問い合わせ

樹麻紅工房様

 WEBサイトにて、そちらの工房を知りました。現在、できれば修理していただきたいぬいぐるみがあるのですが、修理可能かどうか、また費用についてもお尋ねしたいと思っています。現在の状況は以下の通りです。人形は少し起毛した化繊の肌色の布でできているのですが、それがミシンの縫い目から穴がでてきたり、擦り切れたりして中の詰め物(ポリエステルの綿と思われます)が4、5箇所露出しています。(鼻の頭、指先、親指、首や腕の付け根など)。中身がパンパンにつまっており、布を取り替えないと繕うのは無理なように思われます。(そこからまた穴ができて広がりそう)。実際に見ないとわからないとおもいますが、修理の可能性と、修理費用の目安をお示しいただければ幸いです。以上の件、どうぞよろしくおねがいします。

修理の内容

 メールや電話でのやり取りの後、実物のぬいぐるみを目の前にお客様とどのように修理するかを決めていきました。しかし、時には生地の耐久性に限界があるときは修理というよりも、ぬいぐるみ自体を複製せざる終えないこともあります。しかし、出来るだけ現状の状態で修理を進めていくためにいろいろなアイディアを出し合いお客様のご要望に応じていきます。

 修理必要な箇所は単純に破れたところを縫い合わせて修理することを考えますが、今回のお問い合わせでは出来るだけ修理後に見栄えもよく、耐久性のあるものにさせるために、皮膚の生地の移植手術をおこないました。破れた生地を新しい同じ色の生地にかえたとしても、どうしても古い生地と新しい生地の発色に相違がみえて不自然な表情になってしまいます。今回はあえて新しい生地を使用せず、頭部の部分の生地をとり使用しました。また、頭の部分にはあたらしく毛を生やし、新しい人形にうまれかわりました。薄くなりかけている生地の部分は、生地の後ろから特性のりでのりうちし補強しておきました。すべての修理方法はお客様に確認をとり了解を得ながら進めていきます。

 治療前     治療後

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パンダ 横浜市のY.Yさんからのお問い合わせ

樹麻紅工房様

 お世話になります。損傷が激しく大変かと思いますが修理をおねがいします。パンダちゃんの症状は、目が没落、鼻がぬけている、両耳の内側はほつれていてやぶれています。胸からお腹にかけては、生地がよわってきたところでお腹の部分だけ自分で修理していますが、胸の部分のほとんどが生地が擦り切れ、わた(スポンジ)が丸見えになっています。修理のほうをよろしくおねがいします。

 

修理の方法

 修理方法は、パンダちゃん特有のくまははがれた跡に薄っすらとのりのあとがあり、形の大きさが判断できたため、黒目をつけて復元しました。耳の内側と足裏は、下の生地にちかい白い布で張替え、胸からお腹にかけても同様に白っぽい生地で張替え作業をしました。ぶらぶらととれかかっていた首は内部を少し補強した上で周りの生地を絞り上げてシッカリ座るようにしました。全体に生地が疲れ、ほつれや小さな穴があいていたのでそれらも同時に修正していきました。また、感触(抱きごこち)を向上させるため、ポリエステルの綿をすこし補充し、よりいっそう元に近い状態にしていきました。

 

  治療前  治療後

 

治療中の様子

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アライグマ腕人形 川口市のN.Tさんからのお問い合わせ

樹麻紅工房様

 早速ですが、「あらいぐま」の縫いぐるみを2体おくらせていただきます。子どもが赤ちゃんの時から大事にしていたぬいぐるみです。表面の毛が抜けて、下の生地が見えています箇所の修理が可能かどうかのお知らせいただければ幸いです。

 

修理の方法

 送られてきたアライグマ2体の目立つ‘脱毛症‘は4箇所ほどあり、そのほかにも10箇所ほど小さなほころびが見えました。症状からみて、同色系の毛糸で‘植毛‘し、生地裏側から補強処理を施せば、ほぼ元通りにます。それにしても、赤ちゃんの時から8年ほどの使用で痛みは激しいです。おそらく、お子さんは毎日のようにそばにおいて大切にしていたことが推測できます。人形に腕を差込み、お父さんやお母さんと人形劇を楽しんでいたのかもしれませんね。親子の絆を感じさせる‘脱毛症‘です。

喜びのお便り

 ぬいぐるみを受け取りました。短期間でやていただきました本当にありがとうございます。この2匹のアライグマは主人がアメリカ出張の際に、「お店で目と目があった」といって、当時2歳だったこどもにかってきました。今でこそ表面の毛がごわごわしていますが、当時は肌触りもよく、また手を入れてうごかしたときのしぐさがかわいいので子供の一番のお気に入りでした。今は生きている動物を飼うことがむずかしいので、我が家の癒し系です。

 

治療前 治療後

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オコジョ 横浜市のF.Kさんからのお問い合わせ

樹麻紅工房様

 私が大切にしているオコジョのぬいぐるみの修理について相談したくメールしました。現在、症状は数ヶ月前から、鼻がべとべとしている感じがあったり、ひび割れなどがあるのです。どうしてよいかわからずにいます。とても大切なぬいぐるみなので、本当にどうしていいかわかりません。どうかよろしくお願いします。

修理の方法

 ベトベトというのがどういう状態なのかみないとわからなかったのですが、送ってもらうことしました。聞くところ、洗濯機で時々あらっていたそうで、オコジョのプウちゃん(ぬいぐるみの名前)は今、薄いグレーになっていました。耳の中や脇のしたなどをみると、はじめは真っ白な生地だったのがわかりました。おそらく度重なる洗濯で、汚れが全体に広がり、グレーになってしまったようです。問題の鼻は粘土のようにとけていました。プラスチックで芯をつくり、レザーでくるむようにして鼻の形をつくり、とりつけました。完了です。

喜びのお便り

 よくできていてよかったです。茶色の糸でできていたひげがとれていたけれど、透明なナイロン糸をつけてもらってありがとうございます。主人も喜んでいました。ありがとうございました。

 

治療後

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湖水地方で出会った愛のメッセンジャー

  私のアトリエは、筑波山系の東に伸びる山並みの一角にある加波山(709M)の懐深くにある。水田が広がる平野の方からは、森に囲まれた屋根の一欠けらもみえない、いのししが闊歩するような山奥だ。

 こんな辺ぴなところへ、迷わず訪ねてくるから不思議だ。みなさんカーナビとかいう衛星と交信しながら道案内してくれる装置をマイカーに備えているために、迷うこともないそうだ。もっとも、イノシシだって毎年毎年、えさのある畑に美味しい農作物ができるころ、間違いなくあってきては食い荒し回っていくのだが、イノシシもカーナビらぬシシナビをもっていうのだろうか。

 東京、日野市のY.Mさんご夫妻も、約束の時間にぴたりとやってきた。具合の悪い子はディズニー映画のキャラクター、クマのプーさんこと[ほんものくん]。抱っこしてきたのは奥さん。二人ともすがすがしく若い。

 Yさんは、大のサッカーファンで02年の2月には英国の競技場まで行った。もちろん、ベッカムやオーエンなど名だたる選手のプレイみたさもあったが、スタンドとピッチが一体になって盛り上がるサッカーそのものを体感したい、自らをその雰囲気の中においてみたい、と本場のスタジアムの雰囲気をたのしんだそうだ。

 試合の合間に時間ができたYさんは、美しい自然と、動物たちのおりなすとっても人間くさいドラマ[ピーターラビットのおはなし]の、その主人公、ピーターラビットの故郷、イングランド北部の湖水地方にある博物館を訪ねた。作者のビアトリクス ポターの「ピーターラビットのおはなし」が世に出てちょうど100年に当たるのが、2002年。様々な記念イベントが開かれているとあるギャラリーで、クマのプーさんを見つけた。ピーターラビットの中にぽつんとプーさんがいた。

 赤い服着て、ちょっとでっぷりしたプーさんに一目ぼれ、かわいい!とまようことなくCさんへのお土産に買った。[プーさんに託してCさんへの思いを伝えたかった」という。その思いはずばり当たり、昨年6月ゴールインした。結婚式で、プーさんはトレードマークの赤いチョッキを脱ぎ、フェルトでつくったタキシードを着て出席、誓いの言葉に署名もした。

 クマのプーさんの原作者はA A ミルンで02年は西端120年でした。ピーターラビットの作者ビアトリクス ポターと同じイギリス人。Yさんが訪ねた時は、二人の記念イベントの最中だったようで、絵本の世界の愛がお二人の愛をアシストしたようだ。

 そのプーさんは複製を1つ作製することと、とくに外傷はないが、以前に修理に出した時、綿を詰めすぎたらしく顔がのっぺりしてしまったので、その調整をすること、で引き受けることになった。生地は外国製なので同じものは注文できないので似た物をさがすことになった。目は刺繍でできていて、黒目の縁が盛り上がり、表情のポイントになっている。黒目はそのまま生かした。生地を違い、2体作製した。本物君とあわせて3兄弟に。仲良くYさんに引き取られていった。

 

三兄弟に!

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ぼろぼろ……、生まれ変わって夢のよう

 病院のホームページを見てメールを下さったのは東京都中野区のK・Hさん。

 「縫い付けてある洋服がぼろぼろになってしまっているので、その洋服を交換していただきたい。洋服の生地は今現在のものと同じ物でなくてもOKです。また洋服とおそろいの帽子も交換したいです。顔や手足は汚いですが、それは現状きれいになればいいですが、顔の雰囲気が変るようであれば、そのままにしたいと考えております。

 修理が可能なことを連絡、洋服が同じ物があるかどうか、現物を見て生地を探してみることにした。さっそく22日にワンちゃんが送られてきた。現物を見ると、傷みは相当ひどい。修理方法の2案をメールした。1つは体の部分を解いて、洋服の生地を取り替え現状と同じにする。もう1つは、現状のままで新しい洋服を上から着せる。中には入っているペレット(プラスチックでできたツブツブ状のもの)を大部分出てしまっている様なので補充する。

 13年前に1個、主人が買ってきてくれた。「なんのことはない、可愛いかったから」と。あんまり可愛いのでもう1コ買ってきてくれたそうだ。寝起きを共にして13年、犬はぼろぼろになってしまった。生地は擦り切れ、しょうねがない。洋服は何度も針を入れ、繕ったあとがある。

 こんな添え書きがあった。「とても大切なものなので、お預けする期間をなるべく短くしたいと思っています」。つまり、離れ離れになるのが辛い、と。洋服が擦り切れ、おなかのわたが出てしまっても、それでもいとおしい。思い入れが伝わってくる。

 顔の表情は変えない、洋服と帽子を作り変えることになった。ペレットは穴から飛び出し、だいぶ無くなっていた。お座り姿のこの犬は、お腹から腰にかけ、綿の代わりにペレットを入れ、くたっとした感じで座りをよくしている。

  修理が済み、急ぎ送った。「洋服生地で悩みました。本体を少しでもきれいに見えるようにと思ったのですが。柄は可愛いのを選びましたが、いかがでしょうか」

 オリジナルの柄、雰囲気に近いものに仕上げなければならない。元のイメージを壊さない柄といっても、体の生地そのものが汚れでグレー色を濃くしている。洋服の柄も、同じ物を選んだとしてもイメージは違ってくる。お礼のメールが入った。

 「昨日、無事ぬいぐるみが届きました。とっても丁寧に直していただきありがとうございました。この子たちは13、4年前に主人からのプレゼントでもらったとたん、大変気に入ってしまいました。もともとは800円くらいでスーパーのニチイで買ったそうで、数ある中から顔立ちのいいのを選ぶのに相当時間がかかったみたいです。私は人形よりはぬいぐるみが好きなのですが、この子たちは家族の一員のような存在です。ぼろぼろになってからは心を痛めていましたが、おかげさまでとってもきれいに生まれ変わって、夢のようです。病院に入院中は、主人が以前にデジカメであの子たちを撮ったものをスライドショーにして見せていてくれました」

 ワンちゃんには名前があった。動物柄の「あつこ」ちゃんと「さくらこ」ちゃん。

  退院前の暖かい日、ひらひらと花びら舞う山桜の下で写真に収まった、さくらこちゃんとあつこちゃんは、とても可愛い表情だった。

治療前

 治療後

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クラシックな顔立ちのクマさん

 目玉、鼻が取れそうで、体のあちこちに“毛抜け”穴が開いている、クマさんが入院してきた。30年ぐらい前のものだろか。

 中綿はウレタン、べろは赤フェルト……、ちょっとクラシックな顔立ちをしている。小さいときに買ってもらい、自分の子どもには預けずにしまっておいたそうで、子どもたちがみんな巣立っていったので、また出して可愛がっているという。

 鼻をちゃんと付け、目玉の取り付け用金具がぐらぐらしていたので取り替えた。生地は疲れてしまっていて、穴が5~6ヶ所、植毛した。生地に手を入れようとするとビリッビリッと破け、小さな穴があいているところはこまめに植毛するしかなかった。

治療前 治療後

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「入院中のしばしの別れが辛い……」

 衛兵のクマくんへこの4、5 年、急に愛着が湧き、横浜市戸塚区のC・Rさんは片時も離さず、傍に置いている。そんな衛兵のマックスくん、靴が擦り切れてしまい、このほど入院することになった。

 04年2月5日、届いた1通のメールは、「はじめまして。さっそくですが、かわいがっているクマのぬいぐるみの修理をお願いしたくてメールしました。イギリスの衛兵の格好をしたクマで、足にはブーツを履いているというか縫い付けてあるのですが、13年ほど前に購入したため、擦り切れて無残な姿になってしまいました。代わりになるような生地でブーツの部分を直していただきたいのですが、可能でしょうか?すごく大事にしているクマなので、早めに手元に戻ってきてほしいというわがままな思いもあるのですが……」というもの。

 クマくんへの思い入れと大切にしている様子が伝わってくる。「いまこの子をお預けして4月まで離れているというのは………」と、入院している間のしばしのお別れが辛らそう。話し合いの結果、ブーツだけを作って履かせることになった。ブーツの制作そのものは簡単なので、通信の合間に見せたC・Rさんの愛情物語をつづりましょう。

 車で来たご夫妻。Rさんの膝にはクマの衛兵くんがしっかりと抱かれていた。

 「学生時代にアメリカのロサンゼルスに行った時、ぬいぐるみ専門のデパートに入ったんです。何気なく、ぐるっとお店の中を歩いていてこの子の出会ったんです。そのときは、ただ可愛いから、と買ったんですが、4、5 年前から愛おしさが沸いてきて身近に、片時も離さないように置くようになったんです」

 そして2日後、メールが。「こんにちは。その後、ウチの子に変りありませんか?今ごろどうしているんでしょう。ぬいぐるみなんだから、そのまま籠に入ってるに決まってますよね。淋しがって泣いていないかなぁと、私の方が妙に淋しくなってしまい……」

 心配でたまらないようだ。返事のメール。「Rママへ。クマさん元気ですのでご安心下さい。こっちにもお友達がたくさんいますので、ママほど淋しくないと言ってますよ。でもママが淋しいんじゃ早く帰ろうかなとも言ってますので、できるだけ早く帰れるようにします。もうちょっとの辛抱です」。1週間で仕上げ、返送。

 お礼のメール。「先ほど、無事にマックスが戻りました。朝から『いつ着くのかな』とソワソワしちゃって。丁寧に梱包してくださって本当にありがとうございます」

 「マックスは一人暮らしをしていた私を、ベッドの枕元からずっと見守り続け、結婚後は主人にも可愛がられました。子供というよりも友達という感覚で、その時自分が言って欲しいこと(寂しいときは「元気を出してボクがついてるよ」、何かを頑張っているときは「ガンバレ!大丈夫だよ」と)を言ってくれる一番の理解者のような存在です。入院の時は病院まで直接行って遠藤さんにお会いして安心し、入院が終わって帰ってきた時は、もうドラマ並の感動の再会でした」

治療前  治療後

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たばこの焼け跡に傷心  東京・渋谷区のI.Yさん

 「右足の包帯をしている部分がたばこで……」と持ち主の心の痛みをつづった手紙を添えてシロクマ君が送られてきた。手紙には――、

 「先日お電話にて修理のお願いをしましたクマのぬいぐるみを送ります(名前はシロです)。右足の包帯をしている部分がタバコの火で焼けてしまいました穴で、今回修理していただきたい箇所です。中の詰め物も少し焦げています。足の焼け跡をみるとかわいそうで、本当に申し訳ない気持ちになります。自分の不注意が原因でこんなお願いをするのは心苦しいのですが、できるだけ、焼け跡が目立たないように修理していただきたいのです。どうか宜しくお願いします。」と、あった。

 持ち主の可愛がりよう、そして犯してしまった罪に痛む心が伝わってくる。

 段ボールをそっと開けてみると、大事そうにタオルにくるまれたシロクマ君が出てきた。右足太股部の傷跡には、ガーゼを当て、包帯を巻いて止めている。包帯をはずすと、なるほど 2cmほどの黒い焼け跡の穴があいている。深さも5mmほど入り、黒々と痛々しい。

 手当そのものは難しいものではない。右足内股の傷はしっかり植毛して直した。よく見ると首筋のあたりにも生地が薄れて開いた穴が数カ所見つかったので、植毛で手当をしておいた。

治療前 治療後

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犬に噛まれた一番小型の犬・チワワ  つくば市のM.Mさん

 世界で一番の小型犬として知られる「チワワ犬」が、「本物の犬にかじられた」と送られてきた。茨城県つくば市のM・Mさん、何でも1000円で買ったそうだ。

 このチワワのように、犬に噛まれるケースは案外多い。それとタバコの火でけがをするケース。犬がじゃれるとはいえ、鋭い牙を持っているから、ちょっとした力でたちどころに破けてしまう。

 目の下から口までの間で、切り返しのところからそっくり生地を取り替えた。

 チワワ犬は、本物の体色はベージュ系が多く、最近、毛の長い系統もつくられている。アップル・ドームと呼ばれる丸い顔に大きな耳が愛らしい。世界でもっとも小さな犬。この犬のルーツにはさまざまな説があり、いずれも推測の域を出ないが、南米やメキシコでは、かつて神聖な動物として宗教儀式に使われたと伝えられている。体重1~2キロ、体高13センチ。


治療前  治療後

 

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洗濯機でガラガラ、はいけません

 電話で「遠くて持っていけませんので送ります」とぬいぐるみを送ってきたのは、宮城県塩釜市のI・Yさん。添えた手紙には、「一目惚れをして購入してから1年も経っていないのですが、毎日、どこへ行くにも一緒なので、毛が所々抜けてしまいました。それとおなかの部分ですが、不注意で焦がしてしまいました。家族同然に過ごしているため、かわいそうで仕方ありません。自分の不注意を後悔するばかりです」と、書いてあった。

 「自分の不注意で」と、いやに反省しているようなので、「どうしたのですか」と聞いたら、「洗ってドライヤーにかけた」ところ、胸を焦がしてしまったという。それじゃムネが痛むはずだ。洗濯機でがらがら・自動乾燥機でブワーッとやってしまう人が多く、病院にも何人か訪ねてきている。ぬいぐるみは全体に痛み、生地も弱っていたので慎重に修理をした。

 生地、その他の使用素材にもよりますが、ぬいぐるみを洗うときは、薄めの洗剤で軽く押し洗いをし、陰干しをし、乾いたらよくブラッシングをすることです。ドライヤーをかけたり乾燥機などは使わないようにしてください。洗濯機を使わなければならない時は、せめて遅い回転にしてください。

治療前  治療後

 

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54歳のクマ子ちゃん
~その体は半世紀前の日本の職人技でつくられていた~


 ぬいぐるみ史に残る作品、といえば大げさになるだろうか。そんな珍しいクマのぬいぐるみが入院してきました。

  秋も深まったある日、「お送りした写真だけでは体の壊れ具合が分からないでしょうから」と、開催中の個展会場を訪ねてきた千葉市のI・Tさんの胸にはクマ子ちゃんが抱かれていた。

 クマ子ちゃんを拝見してびっくり。体を覆う生地は全身がすれ切れ、触ると、ボロボロっといまにも破れ落ちそうで、かなりの重態になっていました。ボディの中身は、つまりぬいぐるみでいう「わた」は、木を細く削った年代を感じさせる茶褐色の「木くず」がしっかりと詰められ、ふくよかな表情とボディラインをつくっていました。木くずをいったん崩してしまったら元に戻せない。50年以上前の、ぬいぐるみ史に残るような作品、いまはない技術でつくられていた。

 I・Tさんとよく相談しました。生地は従来のイメージを生かしたものを探すか、まったく新しいものにするか、簡単には結論が出ない。帰ってからも連絡をとりながら考えた末、生地にはムートンの毛皮を使うことになった。

 縫い合わせで問題は顔や頭の立体感を出すこと。型出しを何度もしながら縫い上げ、木くずが50年もの間保ってきた体の線を生かえらせていく。

 元気になったクマ子ちゃん、生地に毛皮を使った分、よりクマちゃんらしさが出た。I・Tさんも「イメージ通りに治りました」と喜んでくれた。私も50年前のクマ子ちゃんに出会えて、修理できたことはほんとうによかったと思う。いまは木くずを使える職人さんは数少なくなってきています。そういう意味でも貴重なクマ子ちゃんである。

 治療前

全身がぼろぼろになっていたクマ子ちゃん、中身は「木くず」のクマ子ちゃん。半世紀前の職人技が偲ばれる

治療後

きれいな姿に生まれ変わったクマ子ちゃん

 

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実物大・そっくりのドーベルマン

 「ドーベルマンのぬいぐるみの確認と修理を希望します」とのメールが、愛知県のDさんから届いた。話を聞いたら大きなドーベルマン。連絡を取り合い、「出来れば見積もりを先にお教えください」ということで、現物を送っていただいた。

 ビニールのプチプチのクッションに包まれ、送られてきた。実物大の大きさ、しかもまたがることが出来る丈夫さで、足が少し短めに仕上げていることを除けば、ドキッとするようなリアリティーがあった。ドーベルマンは、一般には番犬として、飼い主に忠実なことで知られる。欧州の映画などでは、邸宅の番犬として活躍する様子が描かれる。

 傷んでいるところは、鼻の部分の剥がれていることと、左まぶたの部分が取れてしまっていること。よく見ると耳の内側の皮が破れているので、連絡をとって、以上の3か所を治すことになった。

 治療を終え、工房の隅に置いておいた。朝、何気なく工房に入ったとき、私をじっと見つめるドーベルマンの力のある姿にドキッとした。

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